慣らし保育で泣かない子どもに不安を感じるママへ:安心して見守るための9つのポイント

【0歳、1歳、2歳】で保育園に子どもを預けた。慣らし保育がはじまり、周りの子どもたちは泣いているのに、うちの子だけ泣かない…。

”大丈夫かな?と逆に不安になることありますよね。

この記事では、そんな”泣かない子ども”の心の中をやさしく紐解きながら、ご家庭でできる見守りポイントをご紹介します。

0~3歳の認可乳児保育園で元勤務していた保育士であり、発達がゆっくりな6歳の子どもを育んでいるママ、らもりーる代表が執筆しています。

親子の絆が深まり、安心して保育園に預けることができる情報の1つになれば幸いです。

慣らし保育ってなに?その意味と大切さ

子どもにとって大きな環境の変化

保育園は、子どもにとって「はじめてママと長時間離れる場所」。

赤ちゃんにとって、ママは世界のすべて。いつもそばにいて、温かく包み込んでくれる存在。
そんな安心できる場所から離れて、知らない人や場所で過ごすことは、思っている以上に緊張や不安を感じているものです。

だからこそ、慣らし保育では少しずつ時間を延ばしながら、子どもの心と体をならしていきます。

「ここでも安心できるんだ」

「ママは必ず迎えに来てくれるんだ」

そんな気持ちが育つことで、子どもは安心して新しい生活に踏み出していけます。

また、保育園生活は、子どもだけでなくママにとっても大きな変化です。慣らし保育の期間は、ママも新しい生活に慣れていくための重要なステップです。

泣かない子どもの心の中

慣らし保育で泣かない子どもは、「順応が早い」「強い子」と思われがちですが、とても繊細で大切なテーマです。

心理学や発達の分野では、子どもが強いストレスや不安を感じた時に見せる反応は、大きく分けて次の3つと言われています。

  • フライト(逃げる)
  • ファイト(攻撃する)
  • フリーズ(固まる)

このうち、「フリーズ(凍りつき)」は、泣くことも話すこともできず、ただ黙ってその場にいる状態を指します。一見「落ち着いている」ように見えるけれど、本当は緊張していたり、不安を感じていたりすることもあるのです。

もっと子どもの心の中を覗いてあげれば、違うサポートができたのに…。という私の体験があります。

 

保育園で1歳児を受け持っている時に、入園初日から泣くこともなく保育士の話をよく聞いて動いてくれる子がいました。保育士としては手がかからずとても助かる上に、すぐに慣れてくれて良かったと安心していたのですが、表情が硬く笑わないことは少し気がかりでした。ある日お母さんから「3ヶ月間、毎日保育園から帰ってきたら、1時間も授乳を求め離れない」と聞いた時は、子どもが大きく表出している姿しかみれていなかったと愕然としました。

保育園勤務時代に、このような経験をいくつかしていたのに、私は、我が子の時にも見落としてしまっていたのです。
「泣かない息子の逆襲」預けても泣かなかった息子に甘えて、仕事を謳歌していたら、日常の中で息子の逆襲(自己主張)がじわじわとはじまっていたお話し。

 

「泣かない=大丈夫」ではないことを理解して、子どもの本当の心の中を覗こうとする眼差しが大切です。

具体的にどんな心の中が考えられるか、泣かない子どもの心の中を、5つのタイプに分けて観ていきましょう。

泣かない理由と考えられる5つのタイプ

1. 情緒表出が控えめな子(内向的・抑制的な気質)

慣れるまでに時間がかかるタイプで、環境に“凍りつき”の反応を示すことがある(フリーズ反応)

  • 初対面の人や新しい環境で感情を表に出しにくい。
  • 怖くても固まってしまい、泣かずに黙って観察する。
  • 1、2ヶ月後に泣き出す可能性がある。

2. 視覚・聴覚などの感覚が鈍感な子(感覚鈍麻タイプ)

環境の変化やストレスに自分で気づきにくいため、泣かずに淡々としているように見えることがある。

  • 周囲の変化に対して反応が薄い。
  • 大きな音や賑やかな場所でも平気なように見える。
  • 体調をよく崩す

3. 対人関係への関心が薄い子(社会的関心の低さ)

人とコミュニケーションが取ろうとせず、1人の世界を楽しんでいるタイプ

  • 保育者や他の子どもとのやりとりにあまり関心を示さない。
  •  一人遊びを好み、周囲と関係を築こうとしない。

4. 非常に順応性が高い子

気質的に非常に“合わせ上手”な子。とはいえ無理して頑張っている可能性もある過剰適応タイプ。

• 環境の変化に柔軟に対応。周囲を観察し、自分の振る舞いを調整できる。

• 家に帰ってから不機嫌になったり、夜泣き・癇癪が増えるなど「反動」が出る。

5. 不安を外に出せない(表出が難しい)子

情緒的に抑制的、もしくは身体の機能的問題で、不安やストレスを出せないタイプ。

  • 急に不機嫌になったり、癇癪が増えるなど「反動」が出る。
  • よく体調を崩す。

【5つのタイプを参考に、子どものことを観察してみましょう】

  • 子どもが困っているか、困っていないか
  • どんな事に困っているか

子どもが困っていそうであれば、困る原因になっていることに対しての対応が必要です。

困っていなさそうであれば、過剰に反応せず、観察を続けましょう。

困っていそうだけど、何に困っているかが分からない時は、具体的な子どもの姿を先生と共有して協力体制が作れるといいですね。

また、子どもは困ってなさそうでも、ママが困ってある場合もありますので、その際も先生に相談してみてくださいね。

家庭で見られる子どものサイン

がんばっている子どもは、自分から「つらい」とは言いません。

だからこそ、ママが気づいてあげたいサインがあります。家庭で見せる変化が、子どもの『本音』のサインになることが多いのです。

体調や食事の変化、家に帰った時の様子、夜泣きや不機嫌など、普段との違いがないか丁寧に観ていきましょう。

見守りチェックリストと対応の目安

※週1回〜数日ごとに確認するのがおすすめです。

睡眠や食事など生活の中での変化

☐ 夜泣き・夜中に起きることが増えた

☐ 食欲が落ちてきた/食べる量が極端に変わった

☐ 排泄が不安定(おもらし、便秘、頻尿など)

☐ 熱や腹痛など、体調不良が続いている

☐ 疲れているように見える/寝ても疲れが取れていない様子

家での様子の変化

☐ 家でよく癇癪(かんしゃく)を起こすようになった

☐ 些細なことで怒る、泣くようになった

☐ よく甘えてくる、常に抱っこや付き添いを求める

☐ いつもより静か、笑顔が減ったように感じる

☐ 同じ遊びや行動を繰り返す(こだわり行動)

☐ 園でのことを聞いても話したがらない/「わからない」としか言わない

☐ 表情が乏しくなったり、目を合わせなくなった

☐ 一人で遊びたがることが増えた

☐ 遊びながら突然泣いたり怒ったりする

【合計チェック数と対応目安】

  • 0~2個:今のところ大きな変化は見られませんが、引き続き様子を見守ってください。
  • 3~5個:やや負担を感じているサイン。園に家庭の様子を共有しましょう。
  • 6個以上:強いストレス反応の可能性あり。先生や支援機関への相談を検討してください。

変化があった時は、子どもが安心して園で過ごせるように、1人で抱え込まず協力を仰ぐことが大切です。

 

今年、新1年生の我が子は、今のところ泣かずに楽しんで登校していますが、1週間目は、家に帰ってきた後、いつもは泣かないようなちょっとしたことで大泣きしたり、抱きつきにくることが多くなりました。帰宅後、毎日公園に遊びに行きたがりました。身体をしっかり動かすと、心が回復してくるようでした。

2週間目の半ばから、咳と鼻水がでて、食欲が落ち、少し機嫌が悪くなってきていますが、お昼寝をすると、夕方から復活して翌日元気に登校しています。

小学生になっても、息子の出し方は乳幼児期の時と重なる姿が多いので、年々ママとして息子の危険信号とその時に回復する対応が分かりやすくなっています^^

 

安心して保育園で過ごせるために

子どものペースに合わせたステップ

慣らし保育の目安は1~2週間と言われることが多いですが、大切なのは「その子のペースに合わせる」こと。

泣かずに過ごしていても、まだ不安を抱えていることもあります。

子どもは小さな体と心で新しい環境に慣れ、新しい人と信頼関係をつくっていく事に頑張っています。

子どもが見せてくれる様々な姿は、子どもがママとの大切な絆を再確認しようとする自然な反応でもあるのです。

ママとの安定した絆があればこそ、子どもは安心して新しい世界へ踏み出すことができます。

大事なのは「泣く・泣かない」ではなく「安心できているか」です。

「うちの子だけまだ短時間…」と焦らずに、「今できることを一歩ずつ」で大丈夫です。

家庭でできるサポート。9つのポイント

保育園でがんばっている子は、家に帰るとホッとして甘えたくなります。
それは「ママがいちばん安心できる場所」だから。

ぎゅーっと抱きしめたり、ゆったり話せる「安心時間」や

  • 「今日もがんばったね」
  • 「えらかったね」
  • 「ちょっとドキドキしたのかな?」

そんなママの声がけは、子どもにとって本当に大きな支えになります。

思いっきり甘えたり、崩れたり、ワガママを言える環境を用意してあげることで、安心して外でも自己を出せるようになっていきます。

家庭でママができるサポートは「安心感の積み重ね」です。

《安心できる時間+見通しある習慣+小さな分離の練習》が、ママと離れて過ごすための土台になります。

子どもは話せなくても色んなことを理解しています。分からないと思わずに、1つひとつ丁寧に対応してあげてくださいね。

9つのポイントをご紹介します。

1.スキンシップをたっぷり

抱っこ、おんぶ、目を見て話しかける、手をつなぐなど、肌と肌、心と心が通じ合う時間を1日10分!出発前、お風呂上りや寝る前のふれあい遊びやベビーマッサージもgood!

2.反応的な関り

泣いたり、訴えたりしたときにすぐに応えてあげる。「分かってもらえている」という実感が、安心感につながります。

3.毎日同じ流れで過ごす(リズムある生活づくり)

例えば、起きる→朝ごはん→着替える→トイレ→歯磨き→出発…と一定のパターンにすると、子ども自身が見通しを持ちやすくなり安心して過ごせます。

4.笑顔で見送る・迎えに行く

別れ際と再会を大切に。「行ってらしゃい」「お迎えにくるよ」「おかえり」「会いたかったよ!」毎日、同じ言葉を明るく繰り返すことで安心感がでます。リアクションを大きめに声
をかけてあげましょう。

5.園での遊びを共有する
保育園で楽しんでいる歌や遊びを家でも一緒に楽しむことが、園での時間もママとの楽しい時間を思い出し安心に繋がります。次の日の予定を伝えてあげることも、見通しをもてて安心につながります。
6.話したくなる時間

こちらから園での様子を色々聴くよりも、子どもから話したくなる雰囲気をつくることが重要です。バタバタしていると子どもは話すきっかけを逃してしまいます。送迎時、お風呂時
間など、ママの気持ちをゆったりもつ時間をつくってみてください。

7.寝る前の10分を大切に

一緒にお布団にはいり、心と身体を子どもに向ける時間を作りましょう。安心できる声で語りかけてあげることは、子どもの心を穏やかにし、ぐっすりと質のいい睡眠がとれます。ぐっ
すり眠れることで、免疫力を高め、感染症にかかりにくい身体と、次の日も新しい環境に対応する活力が湧きます。

8.楽しい分離を生活の中でちょっとずつ

「ママ、トイレいってきま~す!」戻ったら「ただいま~!」と短時間離れる時間を遊びのような感覚で楽しむ。パパや祖父母とのお留守番など、こっそり離れず、バイバイの体験の積
み重ねが、ママと離れていても楽しい時間がある、ママは必ず帰ってくるという見通しがもてるようになります。

9.ママ自身の心の安定が大事

ママが安心して送り出せると、子どもにも伝わります。不安なときは、先生とこまめにコミュニケーションをとりましょう。ママ自身がリラックスする時間を持つことも大切です。

 

先生との連携で、もっと安心に

保育園の先生とママが「ちょっとした会話」を楽しそうに交わすだけでも、子どもの安心感はぐっと高まります。

  • 「今日はどうでしたか?」
  • 「ごはんは食べましたか?」
  • 「お友だちと遊べましたか?」

小さなやりとりが、ママと先生の信頼関係を深め、子どもは「大好きなママが信頼している人だから大丈夫だ」と心を開いていくことができます。

突然死のリスクとその対応

SIDS(乳幼児突然死症候群)とは

SIDSは、元気に見えていた赤ちゃんが、眠っている間などに突然亡くなってしまう原因の分からない病気です。
0歳に多いとされますが、保育園生活のはじまりの1歳以上にも注意が必要といわれています。
発症リスクを低くするには、①あおむけに寝かせる ②できるだけ母乳で育てる ③たばこはやめる

参照: 政府広報オンライン 赤ちゃんの原因不明の突然死 「SIDS」の発症リスクを低くする3つのポイント

慣らし保育期間中の注意点と予防策

慣らし保育で泣かないということが、直接的に乳幼児突然死症候群(SIDS)と関連している、という明確な医学的根拠は今のところありません。

ただ、強いストレスや感情を外に出せない状況が続くことは、子どもの心身にとって負担になることで、子どもの体調不良や突然死につながる可能性も考えられます。

泣かない子は手がかからないことが多く、新生活のバタバタしている中で、保育園でも家庭でも、ストレスが溜まっていることに気づいてもらえないことが多くなるので

「日々の小さなサイン」を見逃さないようにすることが大切です。

家庭での見守りチェックポンとを参考に、毎朝の体調把握、特に「いつもと違う」様子を気にかけてあげてくださいね。

園での安全管理対策について聞いておくことも、安心材料の1つになり、ママも安心して見守ることができます。

ママの不安と向き合うために

周囲の理解を得るためのコミュニケーション

園での姿と家庭での姿がかけ離れていると、ママの心配を「気にしすぎ」「みんなそんなもの」と安易に先生から返答されてしまうことがあります。

家庭内でも、ママと2人きりの時と家族でいる時の姿が変わったりするので、「自分の対応が悪いのかも」「甘やかしすぎなのかも」と自分を責めやすくなることもあります。

焦らなくて大丈夫。慣らし保育の期間や慣れるまでの時間、出す姿は一人ひとり違います。

「うちの子は…」と周りの子どもと比べて焦る必要はありません。

子どもを預けて仕事をすることは、可哀想なことではありませんし、愛情不足にもなりません。子どもは、仕事をしてキラキラ輝くママも大好きです。

周りから言われるいろんな言葉に対して、沸き起こってきた感情を受け止めながら、冷静に子どもの観察を続けてみてくださいね。

明日から、いつもより少しだけお子さんの”帰宅後の様子”に目を向けてみてください。

ママは、子どもが生まれてきてから1番長い時間を過ごしている、我が子のスペシャリストです。

我が子の小さなサインが見つかるかもしれません。

ご自身の違和感が周りの人にも伝わるように、「泣かない子の5つのタイプ」や「見守りチェックポイント」を参考に、具体的な姿を言葉にして、ノートに書き留めてみてくださいね。

そして、お子さんの姿の整理ができたら、改めて先生や家族に共有して、協力を仰いでみてください。諦めず、根気強く関わり続けることで、必ず周りも理解を示してくれるはずです。

ママがもっている我が子への愛はすごい!応援してます♪

自分自身の心のケアとサポートも忘れずに

慣らし保育がはじまっても、子どもがあっさりと離れていくように見えると、こんな気持ちが浮かぶママも多いです。

「寂しいのかなって思っていたけど、あれ?平気そう…。ママがいなくても大丈夫、って言われてるみたいでちょっと切ない…。」

これは決して、”わがまま”な感情ではありません。ママ自身が、子どもとのつながりを大切に思っているからこそ沸いてくる自然な気持ちです。

子どもが泣かずに離れていくとき、我が子の心の中が分かると、ママの心にもあたたかい余白が生まれます。

「今日も帰ってきた子どもとしっかり向き合えた私、えらいな」

「先生に我が子の姿共有するのがんばった!すごい!」

「ちょっとだけ、自分の時間を大切にしてもいいかも」

”子どもを信じる力”と”自分をいたわる時間”をもてると、ママにとっても成長のステップになります。

自分の気持ちが置いてきぼりにならないよう、自分の気持ちに寄り添ってみたり、同じような経験をしたママと話してみたり、専門家に相談してみたり、ママ自身の”安心の居場所”も見つけてくださいね。