子育ては「待つもの」だった時代を知ると、心がゆるむ〜思い通りじゃないのは、当たり前だったんだ
「なんで今、食べてくれないの?」
「どうして着替えてくれないの?」
「何度言っても片づけてくれない…」
そんな日々の“ちょっとしたストレス”に、心がいっぱいになってしまうこと、ありますよね。
毎日、子どもと過ごす中で、「待つこと」がこんなにも難しいなんて…と戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
でも、少しだけ、昔の暮らしに目を向けてみると、
その“待てなさ”は、あなたが悪いわけじゃないことに気づけるかもしれません。
この記事は、親のせいでも、子どものせいでもない。
「なんでこんなにうまくいかないの?」という日々の悩みに、社会背景や価値観の視点からやさしく光を当てていく
特集『子育てがうまくいかない…その本当の理由』シリーズ、第2回です。
➤第1回は、子どもが「思い通りにならない」と悩むあなたへ〜子育てのストレスと向き合う、やさしい視点〜
昔の子育ては、「育つのを待つ」子育てだった
少し前まで、私たちの祖父母やそのまた前のご先祖様たちは、
自然の中で生きていました。
お米をつくるにも、野菜を育てるにも、
太陽が出るのを待ち、雨が降るのを待ち、芽が出るのを待つ。
待つことは“あたりまえ”で、
何かが「思い通りにならないこと」も、日常の一部でした。
たとえば、台風で苗が倒れてしまったり、
寒くて種が芽を出さなかったりしても、
「そういうときもあるよね」と、自然と受け入れるしかなかった。
そんな暮らしの中で育てられていた子どもたち。
大人たちは、すぐに成果を求めず、
「育っていく時間」を見守っていたのだと思います。
便利になったことで、子どもの“育ちの場”は減っていった
時代が進み、暮らしが便利になるにつれて、
子どもが自然と経験していた“育ちの時間”も、少しずつ減ってきました。
たとえば、かつてはお風呂の温度をかき混ぜて調整するのが、子どもの仕事でした。
二層式洗濯機の時代には、洗濯が終わったらお知らせ音を聞いて、
自分で脱水機に入れ替えるのも、子どもたちが楽しみにしていた役割。
掃除機がない時代には、濡らした新聞紙をちぎって床にまき、
それを一緒に掃き掃除する――そんな家のお手伝いの中で、
生活とあそびがつながり、自分が獲得していってる力を発揮しながら、
「家族の一員として役に立っている」という実感も得ていたのです。
でも今は、ボタンひとつで、洗濯もお風呂も掃除も済んでしまいます。
便利さの代わりに、子どもたちが自分の力を発揮し、“頼られる体験” “待つ体験” は、自然と減っていきました。
テレビからビデオ、そしてスマホへ…親子の関わりのかたちも変わった
かつてのテレビは、子どもが楽しめる番組ばかりではありませんでした。
だからこそ、子どもは親のそばにいたり、一緒に動いたりしていました。
ところがビデオが普及して、「楽しい場面だけ」を繰り返し見られるようになると、
一人で過ごす時間が増え、後追いをしない子が増えたとも言われています。
さらに、メールやLINEが当たり前になった時代には、
赤ちゃんが生まれてすぐにお母さんの声で泣き止まない、というケースが目立つように。
お腹の中で、お母さんの声を聞く時間が減っていたことが理由ではないかと考えられています。
こうして、家電やメディアの発展とともに、
親子の関わりは、少しずつ「静かに」「すれ違う」ようになっていったのかもしれません。
それでも、大切なことは変わらない
便利になった今の暮らしを、否定する必要はありません。
その中で「子どもにとって本当に大切なこと」が見えにくくなっているだけ。
むしろ今、改めて「子どもに必要な関わり」がクローズアップされてきたことは、
とても大きなチャンスなのだと思います。
どんなに時代が変わっても、
子どもの心と身体が育っていくために大切な“関わり”は、変わりません。
“待つこと”も、“手を貸すこと”も、“そばにいること”も、
今の時代だからこそ、あえて意識していきたい大切な営みです。
急がないでいい。
今の私たちは、いつも“結果”を急いでしまう
社会が便利になり、効率がよくなったぶん、
「待たずに手に入る」ことが増えました。
スマホひとつで欲しい情報がすぐに手に入る。
ネットで頼めば、翌日には荷物が届く。
ボタンを押せば、レンジで1分。
便利さの中で育った私たちは、
「待つ」ことに慣れていないのかもしれません。
だからこそ、子育てで「待つ」場面に出会うと、
とてもつらく感じてしまうのです。
子どもは、自分のペースで「育つ」ものだから
おむつがとれない。
イヤイヤ期が長引いている。
発語がゆっくり。
そんなふうに、人と比べて焦ってしまうときこそ、思い出してみてください。
自然の中で、花が咲くタイミングが一つひとつ違うように、
子どもたちの“育つペース”も、それぞれ違うのがあたりまえなんです。
そして、親である私たちも、同じように「待つこと」に戸惑いながら育っている途中。
だから、焦ってしまったとき、
イライラしてしまったとき、
「私は待つのが苦手なだけかもしれないな」って、
自分をちょっとだけゆるめてあげてください。
子育ては、育ちを“信じて待つ”営み
「待つこと」は、
時にしんどいし、不安にもなる。
でも、「育つ力を信じて待つ」というのは、
とても大きな愛のかたちだと、私は思うのです。
うまくいかない日も、育ちの途中の証。
すこしずつ、ゆっくりと、親も子も成長していく旅。
今日もあなたとお子さんの歩みが、
そのままで大切なものになりますように。
▶ 第3回につづく
「正解探しを手放して、子どもの世界をのぞいてみる」
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今日も、あなたとお子さんにやさしい風がふきますように。
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